仕組み
測温抵抗体の原理
あらゆる金属において温度変化により電気抵抗は変化しています。この原理を利用したのが“測温抵抗体”です。測温抵抗体の素線材料として、白金、ニッケル、銅などがありますが、特に白金は、他の金属に比べ温度による変化が直線的で温度係数も大きく、温度測定用として、精度、安定性などで優れている事からJISの測温抵抗体として指定されています。
熱電対に比べて高温で使用いただけませんが、中温領域から低温領域(-200 ~ 650℃)において高精度で検出可能です。
白金は王水やハロゲン元素(塩素、臭素、沃素)以外の一般的な酸、アルカリには侵されず化学的に安定した金属です。
一般型測温抵抗体
概要
保護管(シールパイプやくりぬき管)の中に、測温抵抗体の素子を入れたもので管径が細いものから太いものまで製作可能です。
【特徴】
- ① 管径が太いものが製作可能なため、強度的にも優れており長期使用に耐えられます。
- ② 応答速度が遅い。
シース測温低抗体
概要
シース測温抵抗体は測温部と導線部により構成されています。測温部はシース中にMgO粉末の使用により、白金抵抗素子がエアギャップなく測温部、導線部とも高温領域においても優れた絶縁抵抗を保ち、良好な熱伝導を維持します。
シース測温低抗体構造図
【特徴】
- ① 測温部分を除いたシースの屈曲が自在であるため複雑な形状の機構部分にも容易に取り付けられます。(先端から50mmは曲げないでください。)
- ② シースと白金抵抗素子との間にエギャップがなく、素子自体の熱容量が小さいため応答性が良好です。
- ③ シース素材はSUS316を使用しているので耐酸耐食性雰囲気でも使用できます。
- ④ 素子自体軽く、MgOで強固に固定されているので耐震性に優れている。
- ⑤ 高温下でも電気絶縁性を保ちます。
抵抗体の種類
抵抗体 | 記号 | 抵抗値(Ω) | 抵抗比 | 規格 | |
---|---|---|---|---|---|
0℃ (R0) |
100℃ (R100) |
(R100/ R0) |
|||
白金測温抵抗体 | Pt100 Ω | 100 | 138.51 | 1.3851 | JIS C 1604- 2013 |
JPt100 Ω | 100 | 139.16 | 1.3916 | JIS C 1604- 1989 |
|
Pt1000 Ω | 1000 | 1385.1 | 1.3851 | ||
ニッケル測温抵抗体 | Ni 508.4 Ω | 508.4 | 771.3 | ||
バルコ測温抵抗体 | バルコ500 Ω | 453.2 | 673.3 | 500 Ω at 23.3℃ |
許容差
Pt100 | JIS C 1604- 2013 |
0℃における 公称抵抗値 |
使用温度 範囲 |
測定温度 ℃ |
許容差 | |
---|---|---|---|---|
クラスA | クラスB | |||
温度値℃ | 温度値℃ | |||
100Ω | L | -200 | ±0.55 | ±1.3 |
-100 | ±0.35 | ±0.8 | ||
0 | ±0.15 | ±0.3 | ||
100 | ±0.35 | ±0.8 | ||
M | 0 | ±0.15 | ±0.3 | |
100 | ±0.35 | ±0.8 | ||
200 | ±0.55 | ±1.3 | ||
300 | ±0.75 | ±1.8 | ||
400 | ±0.95 | ±2.3 | ||
H | 0 | ±0.15 | ±0.3 | |
100 | ±0.35 | ±0.8 | ||
200 | ±0.55 | ±1.3 | ||
300 | ±0.75 | ±1.8 | ||
400 | ±0.95 | ±2.3 | ||
500 | ±1.15 | ±2.8 | ||
600 | ±1.35 | ±3.3 | ||
650 | ±1.45 | ±3.6 | ||
S | 0 | ±0.15 | ±0.3 | |
100 | ±0.35 | ±0.8 | ||
200 | ±0.55 | ±1.3 | ||
300 | ±0.75 | ±1.8 | ||
400 | ±0.95 | ±2.3 | ||
500 | ±1.15 | ±2.8 | ||
600 | ±1.35 | ±3.3 | ||
650 | ±1.45 | ±3.6 | ||
700 | — | ±3.8 | ||
800 | — | ±4.3 | ||
850 | — | ±4.6 |
階級と測定電流
階級をA,Bの2種類が規定されています。また測定電流は0.5mA、1mA、2mAのいずれかで標準は1mAです。
記号 | クラス | 許容差(℃) | 測定電流(mA) |
---|---|---|---|
Pt100 (JPt100) |
AA | ±(0.1+0.0017 │ t │ ) | 0.5、1 |
A | ±(0.15+0.002 │ t │ ) | 0.5、1、2 | |
B | ±(0.3 + 0.005 │ t │ ) | 0.5、1、2、(5) |
(注) │t|は+、-の記号に無関係な温度(℃)で示される測定温度である。
JIS C 1604- 2013 |
試験温度 ℃ | 絶縁抵抗 MΩ | 試験電圧 Ⅴ |
---|---|---|
常温 | 100 | 10 ~ 100 |
100 ~ 300 | 10 | 10以下 |
301 ~ 500 | 2 | |
501 ~ 850 | 0.5 |
※シース測温抵抗体には適用されません。
素子数
標準は素子数が1つのシングルエレメントと2つのダブルエレメントかあります。又、標準以外の仕様は弊社までお尋ねください。
使用温度
弊社の測温抵抗体素子はPT100Ωセラミック巻線製は-200~650℃、PT100Ω薄膜製は-70~500℃が条件により選定され内蔵されていますが、部材の関係で使用温度が異なります。必ず使用温度範囲でご使用願います。
測温抵抗による温度測定方法
固定抵抗R1R2を等しく、可変抵抗R3を加減して検流計Gに電流が流れない
R1(R3+r2)=R2(+r1)であるからr1=r2ならば
R3=Rとなり、高信頼性の測定方法です。
Ni電線(r)の抵抗はほとんど含まれません。
抵抗素子の両端にそれぞれ1本の導線を接続した形式。
抵抗素子の一端2本、他端に1本の導線を接続し、導線抵抗の影響を極力除くことができるようにした形式。
抵抗素子の両端にそれぞれ2本の導線を接続し、導線抵抗の影響を全て除くことができるようにした形式。
シース測温低抗体の仕様
標準規格 | |
---|---|
規格 | JIS C 1604—2013 |
種類 | 白金 |
公称抵抗値(0値) | 100Ω |
記号 | Pt100(JPt100) |
R100/R0値 | 1.3851(1.3916) |
階 級 | A級・B級 |
抵抗素子数 | 1素子・2素子(除く ≦φ3.2) |
シース外径(mm) | Φ1.0・Φ1.6・Φ3.2 Φ4.8・Φ6.4・Φ8.0 |
シース材質 | SUS316 |
シース長さ | min 100mm ~ max 150000mm |
測温部長さ | max 20mm |
導線形式 | 3導線式(4導線式) |
導線材質 | ニッケル |
最小曲げ半径 | シース外径の5倍R Φ6.4・Φ8.0 |
使用温度範囲 | -200℃~600℃ |
(注記) 上記以外の規格(JIS C 1604-1981、JIS C 1604-1989、JIS C1604-1997) 及び上記以外の製品も製作いたします。
シース測温低抗体の寸法
弊社標準のシース測温抵抗体はφ 1.6、φ 2.3、φ 3.2、φ 4.8、φ 6.4、φ 8.0 の6 種類外径をご用意しています。又、シースの肉厚はシース外径の1/10 以上となります。
シース外径(㎜) | シース肉厚(㎜) |
---|---|
φ 1.6 ± 0.05 | 0.16 以上 |
φ 2.3 ± 0.05 | 0.23 以上 |
φ 3.2 ± 0.05 | 0.32 以上 |
φ 4.8 ± 0.05 | 0.48 以上 |
φ 6.4 ± 0.05 | 0.64 以上 |
φ 8.0 ± 0.05 | 0.80 以上 |
金属保護管
概要
測温抵抗体に使用する保護管の材質としては一般的にはSUS304、SUS316、SUS316L 等のオーステナイト系ステンレスが使用されます。腐食雰囲気で使用する場合、また、配管用等に使用する場合には保護管の強度がその環境に適しているのか否かを判断する必要があり、必要な情報を頂き、その情報を基に、『保護管の強度計算』を実施しております。
材質 | 常用温度 ℃ |
最高温度 ℃ |
概略組成 | 特性 |
---|---|---|---|---|
普通鋼 SS400 |
酸化 600 還元 800 |
900 | 耐酸性や酸化に弱いが還元に強い | |
SUS304 | 900 | 1000 | 18Cr-8Ni- 0.08C-1Si |
耐熱・耐食性に優れた抵抗を示す。 Ni を含んでいるのでイオウ還元ガスに弱い |
SUS304L | 900 | 1000 | 18Cr-9Ni- 低C |
SUS304 のカーボン量を少なくしたもの (C=0.03% 以下) で、溶接の熱影響によって生じやすいCr 炭化物の析出が少ない耐粒界腐食性材料である。 |
SUS321 | 900 | 1000 | 18Cr-9Ni- Ti |
Ti を含みSUS304 より耐食性を増す。 特に溶接機の粒界腐食防止に優れている。 |
SUS316 | 900 | 1000 | 18Cr-12Ni- 0.08C-2.5Mo |
Mo を含み耐熱・耐酸・耐アルカリに優れている。 |
SUS316L | 900 | 1000 | 18Cr-12Ni- 0.03C-2.5Mo |
SUS316 のC の量を少なくしたもので、耐粒界腐食材料である。 |
チタン | 酸化 250 還元1000 |
800 | 99.5Ti 以上 | 低温における耐食性は極めて優秀であるが、高温では酸化され脆くなる。 |
モネル | 500 | 600 | 68Ni-Cu30 | Ni67 ~ 70% とCu-Fe からなり、高温・高圧に強く耐食性にも優れている。 |
使用温度( 常用温度、最高温度) 雰囲気により異なります。その他材質の保護管の取扱いもございます。
保護管取付、加工品
フッ素樹脂
高温・低温に強く、耐薬品性に優れ、低摩擦、非接着、電気絶縁性、そして安定性に優れた高性能なフッ素樹脂はフッ素原子を含むプラスチックの総称です。
材質 | 耐熱温度 | 名称 | 特性 |
---|---|---|---|
FEP | -170 ~ 200℃ | Fluorinated Ethylene Propylene テトラフルオロエチレン・ ヘキサフルオロプロピレン共重合体 |
完全にフッ素化されたポリマーで酸・アルカリ、溶剤のほとんどに対し耐性を有する。 |
PFA | -170 ~ 260℃ | Perfluoroalcoxy テロラフルオロエチレン・ パーフルオロアルキルビニル エーテル共重合体 |
耐薬品性はFEPと同じ様な特性を有するが、使用温度は260℃の連続使用に耐える。 |
ETFE | -104 ~ 150℃ | Ethylene Tetrafluoroethylene テトラフルオロエチレン・ エチレン共重合体 |
部分的にフッ素化されたポリマーでFEP、PFAよりは耐薬品性に劣る。しかし、プラスチックに比べると格段な耐性を有する。 |
PTFE | -180 ~ 260℃ | Polytetrafluoroethylene ポリテトラフルオロエチレン |
フッ素樹脂の代表ともいえる樹脂で、耐薬品性、耐熱性は最も優れ、一般にフッ素樹脂(テフロン)と呼ぶ場合、このPTFE を指すことが多い。 |
( 注) ※ 1: テフロン「Teflon®」はケマーズ社の登録商標です。
保護管表面処理加工
名称 | 耐熱温度 | 厚さ(㎜ ) | ||
---|---|---|---|---|
フッ素樹脂 コーティング |
PTFE | -100 ~ 260℃ | 30 μ | ほとんどの化学薬品に対して非常に安定した性質をもっており、わずかに溶融アルカリ金属やそれらの溶液及び高温のフッ素、三フッ化塩素などに侵される。 |
FEP | -170 ~ 200℃ | 50/100 μ | 完全にフッ素化されたポリマーで酸・アルカリ、溶剤のほとんどに対し耐性を有する。 | |
PFA | -170 ~ 260℃ | 50/100/300 μ | 耐薬品性はFEPと同じ様な特性を有するが、使用温度は260℃の連続使用に耐える。 | |
ガラス ライニング |
GLS 加工 | 450℃ | t1 ~ 1.2 | 酸およびガス体の侵入の保護に良好。ホウケイ酸ガラス( 硬質ガラス) に限る。 熱ショックに弱い。 |
チタニア加工 | CH 加工 | 母材による | 強酸に対して耐酸性・耐食性に優れている。 | |
バフ研磨加工 | # 400 | 母材による | 保護管表面を研磨し、鏡面のサニタリ仕上げし、薬品・食品製造装置に使います。 | |
禁油・禁水処理 | 禁油、水 | 母材による | 保護管表面に油分・水分を残さず仕上げます。 |
※ライニングとコーティングの違いは、一般的には被膜の厚さが1㎜ (1000μ) 以上のものをライニング、1㎜未満のものをコーティングといいます。金属保護管の耐摩耗性にはステライト※2 加工、コルモノイ※3加工、タングステン加工、その他の処理を行っています。